辞めた辞めた!
今年の四月に放送されたNHKスペシャル 平成史 第6回東京 「超高層シティー 光と影」をご覧になられましたか? バブル崩壊後、建築規制が緩和されて東京の丸ビルを皮切りに100メートルを超す超高層ビルが乱立しており、今後も建設計画が目白押しだそうです。
それって、この恐ろしいまでの通勤ラッシュの混雑は、今後もひどくなる一方ということなの?
私が仕事を辞めたいと思った一番のきっかけは満員電車でした。
ドアツードアで往復約3時間。バスと電車を乗り継いで都内へ通勤していました。身動きできない状態の車内に30分間立ち続けるのが苦痛で、乗車時刻や車両を何度も変えてみたり、スニーカー通勤にしてみたり、いろんな工夫をしても全く苦痛は緩和されない。
ある日の帰宅途中、最寄り駅に着いてエスカレーターの入り口に並ぶ長蛇の列を見た時、人生に負けたような気がしてしまった。
私は何をしているんだろう。
大げさかもしれない。今でも苦痛に耐えながら通い続けている人が大勢いる中、自分だけが我慢できないなんて許されない。そんな風に思っていたけど、40歳を超えてからというもの、これまで耐えてこられたものが徐々に限界を迎えてきた中で、これからも年金がもらえるまでこの満員電車に耐え続けることは到底無理だと確信した。豊かな暮らしをしたいがために働いているはずなのに身体を壊してしまったら本末転倒だ。働き方を変えなくては。
もういいかな。あとどれくらい貯金すれば老後が安泰なのか、具体的に考えたことなかったけど、このまま貯金額を増やすために自由な時間を持てず、心身ともに疲弊し続けることにどれほどの意味があるのだろうか。
夫婦ふたりでのんびり過ごす時間をもっと持ちたい。思う存分好きなことに没頭したい。40年間使い古した身体をメンテナンスしたい。そんなに贅沢かな?
趣味の車旅や園芸を通して知り合った方たち、平均年齢70歳のおじさまおばさまたちは毎日そんな生活を送っている。
毎日Sunday、うらやましいなぁ。早く定年退職して仲間入りしたいなぁと思っていたけど、われわれ夫婦がその年になるころには年金事情が変わり、『悠々自適な老後生活』はほんの一部の富裕層だけが許される時代になっているんじゃないの? だったら私たちの願いは一生かなわないってこと?
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無理! 絶対やだ! 一回ぽっきりの人生なのに、お金のためにやりたいことができないなんて! 寝たきりになってから後悔の日々を送るなんて! 生きてる意味がない!!
一部の富裕層が世界中のタックスヘイブンに眠らせている莫大な資産を世にばらまいて、みんなが夢を実現できる社会がくればいいのに。政治家も官僚も大企業や大金持ちには逆らえない。「既得権益」の恐ろしさはサラリーマン時代にいやというほど見てきた。世の中が変わるのを待っていたら、あっという間に健康寿命が尽きてしまう。人生は誰かに変えてもらうんじゃなくて、自分で変えなきゃ! だから辞めるの。ヨボヨボになる前に『自分の人生』をつかむの!
辞めた辞めたぁーっ!
老後に叶えようと思っていた夢は今叶えるのじゃ!
と、ここまでが5月の出来事。
その後、上述もろもろを話して夫を説得、夫婦そろって無事退職して現在に至ります。