ビニールハウスが欲しい! その4
1年のうちでもっとも過ごしやすい5月。大雨の後の晴天は清々しく、家に引きこもっているなんてありえない、さぁ出かけようとお散歩に出かけた我々夫婦。
自宅から数㎞歩いた先にある商店街に、最近見つけた和菓子屋さん。お団子や大福だけでなく、おこわや助六ずしなどお手頃に買えるとあって、長い散歩の合間にランチとしてよく食べていました。
今日の変わり種団子も旨かった。
ほくほくで折り返し散歩をして自宅に戻ると、さんさんと降り注ぐ太陽のもと目に入った『おてがる君』。
しまった!!!
5月の爽やかな風の中を歩いてきた我々夫婦にとっては過ごしやすい日であるものの、低くて狭い『おてがる君』の中は一体何℃まで上昇しているだろう。
恐る恐る除いたビニールの中は…….。
ホラーです。
世にも恐ろしい光景が目の前に…..。
ムンムン蒸れ蒸れの『おてがる君』の中で、黄色くブヨブヨになったアガベの赤ちゃんたち。
各地を転戦して3年かけて集めた希少種のあれこれが、無残にもその肉厚な葉の中で沸騰した水分でとろけてしまいました。
いくつかは気丈にも持ちこたえた株もありましたが、最も気にかけていた2株が、ほぼ再起不能と思われる姿に変わり果ててしましました。
ごめんなさい!
めちゃくちゃ暑かったよね。
ほんとにごめんなさい…….。
大切にしていた方から譲っていただいた株。
偶然見つけて大喜びした株。
それぞれに思い出と思い入れのある株たちが、暑さと蒸れで枯れてしまいました。
ほかにも弱り切った様子の子、今は何ともなさそうでも秋に息絶えた姿に変わってしまうかもしれない子。
ビニールハウスの恐ろしさは、人伝えにもネット上でも散々見聞きして、その怖さを知っていたにもかかわらず、我々の不注意であっという間にこの惨状に陥ってしまった。
体中の力が抜けていたところ、
「もう辞めようかな」
夫がそうつぶやきました。
私よりも大事にしてるんじゃないの?というくらい可愛がっていた子株たち。
相当にショックだったみたいです。
自分よりも夫の落胆のほうが心配になってしまうほどの落ち込み様でした。
可愛いアガベ達よりも、自分たちの快楽を優先して、気分のままに行動してしまうなら、こんな希少な株たちは、もっとちゃんと管理できる人にお譲りするべきだったかもしれない。
己の中途半端な覚悟で育てていた多肉植物の数々。
それぞれに適した環境が用意できないのなら飼う資格はないのかもしれません。
夫が、完全な設備と、完全な管理意識が整わないのなら、元々目指していたドライガーデンのほうが、今の自分たちには合っているのかもといいました。
そんなのヤダ! 手放したくない!
そう思いながらも言い返すことが出来ませんでした。
こうして3年間急ピッチで進めてきた『多肉狩り』に転機が訪れました。
断捨離をしないといけないくらい、やたら滅多ら増やしてきた多肉たち。
しばらくは、身の丈に合った属種を、一株一株丁寧に育てていこう。
それが今回死なせてしまった赤ちゃんアガベ達の供養になると信じて。