お留守番 その3【歳を取るということは】
これが歳を取るということなのか。
掃除をしていて、いくつか気付きました。
高いところは手が届かず、届かないまま放置していること。埃が溜まり放題なことから伺えます。
低いところはしゃがめないのか、掃除も出来なければ、引き出しも開けっぱなし。床に近い部分は万事諦めている節がありました。
元々はキッチリとしてお洒落な印象だった叔母からは想像の付かない現状。
プライドの高い叔母にとって、これは不本意なことだろうに。
だから引き継ぎのとき、敢えて細かいことは言わず、犬を洗うことにしても、「うちの子は臭くないから」の一点張りだったのかも知れない。
歳を取ると何もかも億劫になると聞いたことがある。
でも、面倒というよりは、身体が気持ちに付いていかなくなって、少しずつ諦めることになるというのが、実際のところなんじゃないだろうか。
仕方ないことは考えたくない。見なかったことにしてほしい。
叔母の正直な気持ちかも知れない。
その気持ちを汲んで、目をつぶりたい。でもこのまま埃まみれの家で、腐った食糧に囲まれて生きていかせる訳にはいかない。
近くに住んでいる叔母の娘(従妹)に話を聞きたい、伝えたいと思い、夫がメールをしました。
しかし、元々今回の留守番には来なくていいと言っていた従妹は、こちらの質問に答えることはなく、うちの問題に口を挟まないで欲しいと突っぱねられてしまいました。
なんとなく察するのは、何度も叔母には言ったが聞き入れられず、喧嘩の繰り返しが続いて、諦めの心境になってしまっているんじゃないかということ。
そういえば叔母が「娘はなんでも捨てたがる!でも、もったいない!」と怒り口調で愚痴を言っていたことを思い出しました。
夫は従妹に憤慨していましたが、私は母との似たようなやり取りを経験しているので、なんとなく想像も付きますし、従妹の気持ちも理解できます。
でも、理解したところで、このまま何もしなければ、身体に悪いし、危険だ。
同じものを繰り返し買ったり、冷蔵庫の中が賞味期限切れだらけになるのは、認知症の初期症状の典型例だと、後から姉に教わりました。
叔母にとって、もう独り暮らしは難しいのかも知れない。
そして退院後、帰ってきた叔母は、家中がピカピカになっていることに驚いていました。
冷蔵庫については、賞味期限切れのものは全部捨てて、庫内を掃除しておいたと夫が告げたところ、「賞味期限は字が小さくて読めないのよねぇ」と少しバツが悪そうにしていました。
なんだか切ない…。
実の娘より少し距離のある我々の方が、叔母も遠慮があるのか、留守中に我々が勝手に家じゅうに手をつけたにもかかわらず、怒るどころか素直に感謝してくれました(表面上?)。
今回、図らずも歳を取ることの現実を知ってしまった私たち。
自分たちには知らないことがたくさんあるんだなぁ。
でも、知ろうとしなければ、分からないままなんだなぁ。
仕事を辞めて自由な時間がたくさん持てたことで、改めて知ることが出来た高齢者の不便な生活実態。
両親や叔母のこと、また我々夫婦の将来のことについて、改めて考えさせられる1週間になりました。